ブラック派遣先を回避する科学的方法 〜求人内容、営業マン、顔合わせから見抜くコツ〜

個人的な経験で恐縮だが、派遣で求人を探すというのは、大多数のブラック派遣先を回避する作業に他ならない。

何の知識も回避策もなしに派遣で求職活動しようものなら、当初の希望条件も理想もどこ吹く風に、派遣会社の言われるがままにブラック派遣先にぶち込まれてしまうのが定番コースだ。

今回は求人内容、営業マン、顔合わせの3つの要素からブラック派遣先を”出来るだけ”回避する方法を学んで頂きたい。

なお、”出来るだけ”と表現したのは派遣経験が10年以上かつ10社以上の経験があっても、100%回避するのは事実上不可能だからだ。

派遣会社も派遣先も、グルになってあの手この手で巧みにブラックに誘導しようとするからである。

求人内容の落とし穴は平均100個以上

あくまで全国平均だが、派遣求人のポータルサイトはもちろん、派遣会社の自社サイトに出ている派遣求人には、平均100個以上の落とし穴がある。

身も蓋もないことを言ってしまうと、派遣の場合、求人内容だけでブラックかホワイトかを判断するのは、どうやっても不可能なのだ。

以前は「このキーワードが危ない」などと減点方式で採点することで、ブラックを回避しようとしていたが、2021年の最新の研究結果から、このやり方ではブラック回避は出来ないことが科学的に証明されたのである。

文面が派遣会社のテンプレートであったり、営業のヒアリングが適当だったり、そもそも派遣先の担当者が適当だと「適当な求人内容」にしかならないからだ。

文面は派遣会社によってはIT系などの場合に、PC環境や使用ツール名などが細かく列挙されていたり、場所の雰囲気などが書かれていたりもする。残業など数値的な条件も書かれていたりするが、それすらも前述のように「適当」なものである可能性があるのだ。

つまりは、求人内容から読み取れるのは、ざっくりとした仕事内容の目安と、最低時給の2つだけ。ブラックかホワイトかは全くわからないのだ。

営業マンのチェック項目も100個以上

派遣の場合、それぞれの派遣求人や派遣先ごとの担当の営業マンが設定されている。

派遣会社での社内選考なりに通って派遣先が紹介される段階になると、佐藤なり、鈴木なり、担当営業マン個人から電話やメールなどでコンタクトがあるはずだ。

担当営業マンはオンラインでもオフラインでも顔合わせに同席したり、実際に就業する時の条件交渉をしたり、働いてからのトラブル相談などをする相手だ。実質的な派遣会社の窓口である。

大手派遣会社などでは求人を担当する紹介担当者(コーディネーター)と営業マンが分かれていることが多いが、働いてからやり取りするのは営業マンの方なので、営業マンの質を見定めるのは重要だ。

チェックすべき項目は100個以上あるが、今回はその中から特に最低限これだけはチェックしたいというものを取り挙げる。

電話のやり取りが不自然ではないか?

営業マンと言えば、取引先などとコミュニケーションを取るのが日常的な業務の一つだ。ある意味、コミュニケーションの専門職である。

それにも関わらず、電話連絡の際に一般的な感覚やマナーの面から、妙な不自然さを感じる場合は要注意だ。

敬語の使い方がおかしかったり、意味のない場面で妙な沈黙があったり、言葉の端々から感じる全体の印象としての不自然さである。

敬語やマナーの無さは営業スキルの無さを物語っているし、妙な沈黙はコミュニケーション能力の無さや自信の無さが伺えるだろう。

営業マンが発する直感的な危険信号は、経験から言うと、ブラック派遣先への片道切符であることが少なくない。

メールの文面や語尾がおかしくないか?

求人の詳細内容や、細かな条件の確認、急を要さないコミュニケーションはメールでやり取りすることが多いが、きちんとしたビジネスメールが書けているかをチェックすべきである。

中高生や大学生が使うようなネットスラングがビジネスメールで使われていたり、一般的な敬語としておかしい言い回しがあったら要注意だ。

ある大手派遣会社の営業マンは、一般的な敬語表現としてはおかしいが「〜でお願いしたく。」という砕けた表現をメールで使っていた。最低限のビジネスメールの作法を身に付けていない営業マンは、営業スキルや常識を疑った方がよい。

また、会社の文化だと思うが、何でもかんでも語尾に「お問合せありがとうございます!」などと妙に!マークを付けたがる派遣会社も要注意だ。

電話の場合と同様に、メールは営業マンの仕事道具でもある。メール文面から感じる直感的な違和感は危険信号だと思った方がよい。

19時以降など遅い時間の連絡が当たり前

大手派遣会社では一人の営業マンが100人近くのスタッフを担当している場合もあるが、電話でもメールでも一般的な会社の残業時間中に連絡してくる場合は要注意だ。

派遣会社がブラックでノルマが異常に厳しいか、強引に派遣先に送り込むケースが多くて、毎日スタッフのトラブル対応に追われているかのどちらかの可能性が高い。

売れっ子のヤリ手営業マンだから仕事がいっぱい…という可能性は少ない。関わると、紹介や契約に関わる全てのことを適当にやられてしまう可能性がある。

仕事に就いてから相談事などをしようにも電話が繋がらなかったり、メールのレスポンスが悪かったりと、アフターフォローが期待できないのだ。

一方、マイナーな中小派遣会社などでは営業マン一人当たり30人程度しか担当していなかったするのでレスポンス自体は早かったりするが、中身がスカスカの場合は別の観点からダメなので要注意。

派遣先との顔合わせ、会社見学のチェック箇所

派遣会社の営業マンがしっかり「伝書鳩」として派遣先企業での業務内容などを細かく伝えてくれれば、顔合わせや会社見学、業務確認などの場は本来であれば必要ない。

ところが、細かいことは派遣先に直接確認してくれ、と言わんばかりの派遣営業も現実には多いのだ。

派遣先との顔合わせでチェックすべき箇所は沢山あるが、あまり細かくチェックすると、ほとんど全部がブラック派遣先になってしまうので、「これだけは譲れない」という落とし所を設定したり、自分なりに優先順位を付けるのが大切だ。

とりあえず、誰しもが全力で避けるべきブラック派遣先の筆頭格は法律を守らない派遣先だ。

面接じゃないのに面接風のテストをする

派遣社員の採用に不慣れだったり、派遣の法律を知らないか、守る気のないブラック派遣先に多い。

そもそも、一般派遣の場合は面接が法律で禁止されているのだ。

そのため、派遣会社は「顔合わせ」や「会社見学」などの用語を使っているくらいなのだが、面接風の質問が出てきたり、実技試験のようなものが課せられたら、法律を守らないブラック派遣先だと判断してよい。

本来は派遣会社が登録された経験やスキル、作品などから、その派遣先での業務をこなせるかどうか「派遣会社」が独自に判断して採用が決まるのが本来である。

個人情報をボカそうが、派遣先が目の前の本人にスキルを直接確認するような質問をしたり、テストするのは法律違反なのだ。

面接的な質問はブラック派遣先への招待状

経験上、顔合わせで面接を思わせる質問をしてくる派遣先は、就業してからも法律や契約を無視した対応をするブラックであることが多い。

その場では「この程度の質問なら別に…」と軽く思ってしまいがちだが、本当に怖いのは、それはブラックの入口に過ぎないということである。

顔合わせでの面接風質問=ブラック派遣先への招待状だと思った方がよい。

底なしの漆黒の闇への誘いであることも多いので、危険信号は危険信号として、正しくキャッチすることが身を守るためには重要だ。

派遣会社が仕事を紹介する存在として正しく機能していれば、顔合わせで行われるべきは、文字通り「顔を合わせる」ことだけなのである。

一定期間、一緒に仕事をするならば、お互いの顔くらい知っていた方がいいだろうというだけの場であるべきだ。どうしても人と人は相性があるので、仕事内容や待遇は魅力的だけど、あの担当者は無理…という場合もあるからだ。

ところが、その本来の趣旨や目的に反する派遣先というのも多い。

面接と判断すべき質問の例

職種などによっても違ってくるが、実際に顔合わせで聞かれたことのある質問の中から例を挙げてみよう。

最近気になるニュースは?

学生の面接でもあるまいし〜と思うけど、本当にこんな「ザ・面接」みたいな質問をしてくる派遣先があった。新聞記者とかの仕事ではない。

○○の時にどういう手順で作業をしますか?

技術職や専門職でのスキルテストの一種。知識や技術を試す内容で、想定している正確を答えないとならない。

○○は得意ですか? できますか?

そのまんま面接の質問だけど、スキルシートを渡していても、細かく本人の口から確認したいらしい。

タチが悪い派遣先だと、顔合わせの段階で求人募集時にはなかった業務やツールを挙げてくる場合がある。

応募者の経歴を見て「△△も経験があるなら、それもやってほしい」などとぬかしてくる派遣先もあるが、その場で中断して断った方がよい。

まとめ ビギナーズラックには注意

それなりの派遣経験者ならば、ホワイトな派遣先を見つけることは簡単ではないと知っているはず。

だが、派遣就業が1〜2社程度のビギナーだと「たまたまかも知れないけど、今まで結構いい派遣先を紹介されてたよ?」と思ってしまう場合もあるだろう。

どんな世界でも、知識や技術のない初心者が運の良さだけで良い結果を出してしまう場合があるのだ。それを俗にビギナーズラックというが、自分の実力だと勘違いしてしまうと、後で大怪我してしまうことになりかねない。

ビギナーはもちろん、経験者でもブラック派遣先を避けるのは容易ではない。しかし、ブラック派遣先の「ヒント」は見え隠れしているものなのだ。

文字数などの都合で全ては紹介しきれていないが、今回の記事をブラック派遣先から招待状を受け取らないためのヒントにして貰えれば幸いだ。