現代日本の非正規労者の増加などの格差拡大は150年前にマルクスが資本論で論じていたシナリオ通り

日本は世界一派遣会社が多い国で、派遣を含む、非正規労働者は労働者のうち半数近くを占めるほどになっている。

むしろ、正社員などの正規労働者(?)の方が少数派になる未来も遠くない。

しかし、こんな歪で不安定な社会が訪れることは、150年以上も前に経済学者のカール・マルクスが『資本論』で論じていたシナリオ通りなのである。

お金がないと1日足りとも生きられない社会

現代日本人は物心ついた頃から、お金がないと1日足りとも生きられない社会を生きている。

生活に必要な最低限の衣食住さえも、手に入れたり維持するためにはお金が必要。水道光熱費や税金などの支払いにもお金が必要になる。

自身で生産手段を持たない多くの人は、資本家が立ち上げた企業などに雇って貰い、労働によってお金を手に入れないと生きることができない。

特にこれを賃労働というが、現代社会では労働と言えば一般的には賃労働を指すものの、長い歴史の中では賃労働が一般的になったのは比較的最近のことである。

資本主義以前の社会では、衣食住を主に自分や自分の所属するコミュニティの中で生産していたからである。

資本主義社会が成熟すると派遣社員が増える理由

機械化やテクノロジーが進歩すると、個人の技能に頼った職人技に頼らなくてよくなるため、競合する企業が簡単に真似をすることができるようになる。

その結果、苦労して開発した商品のコモディティ化が進む。一般的な商品に成り下がってしまい、ありふれた低価格商品になってしまう。

郊外の大型スーパーなどに行くと、大量生産された商品が棚を埋め尽くしていることだろう。

食品も衣料品も雑貨も、どこかの工場で大量生産した商品ばかりが売り場を埋め尽くしている。人間が生きるのに、こんなに大量に商品が必要なのか? と思うくらいに、商品で溢れている。

目に見える形ある商品だけでなく、サービスやPCやスマホのソフトウェアなどでも同じようなことが起きている。多くの企業が似たようなサービスを容易に提供できるので、差別化を図るのが相当難しくなっている。

企業は生き残りをかけて非正規労働者を増やそうとする

苦労しても利益が上げにくい社会状況のために、企業は生き残りをかけて固定費を下げようとする。

手っ取り早く下げられる固定費とは、ずはり「人件費」だ。

一度雇うと簡単に解雇できない正社員の代わりに、ビジネスの調子がいい時や、忙しい時だけ派遣社員などの非正規労働者を雇うのである。

契約期間が決まっているので、状況が悪くなれば簡単に解雇したり、パートタイム労働者などの場合は勤務時間を減らしたりすることができる。

経済学を学んだことのない身からすると驚くことだが、マルクスは150年以上も前に資本主義が進むと「半雇用者」と呼ばれる非正規労働者が広まっていくことを指摘していたのである。

なんとも救いようがない話だが、世の中的には経営者や役人などは経済学を学んでいた人も多いであろうことを考えると、必然のシナリオであったことに愕然としてしまう。無策というか、なんというか、他によいフレーズが浮かばない。

言えるのは、日本は特に非正規労働者が多い国ではあるが、資本主義社会の国としては特異なことではないということである。