派遣営業の「前任者は働きやすいと言っていた」という言葉を信じてはいけない理由

派遣の求人紹介で、営業担当がよく使う決まり文句がある。

「前任者は働きやすい派遣先だと言っていましたよ」

一見すると安心できる言葉だが、実はこのフレーズはシンプルに地雷ワードである。ここでは、なぜこの言葉をそのまま信じてはいけないのかを読み解いていく。

「前任者の声」は検証不能なブラックボックス

まず押さえておきたいのは、前任者が本当にそう言ったのかどうか、応募者には絶対に確認できないという点だ。前任者が偶然知り合いでもない限り、名前も連絡先も全くわからない。つまり、本当にそう言っていたかを確認できない。

本当の退職理由は伏せられ、前任者が存在したのかどうかすら応募者にはわからない。営業が語る「前任者の声」は、証拠のないブラックボックス情報であり、好きなだけ捏造できてしまう領域だということだ。

営業の目的は「送り込む」ことであり真実の開示ではない

派遣営業のインセンティブは非常にシンプルで、空席を埋め、クライアントに「紹介しました」と言い、契約を成立させることにある。

そのため、応募者の不安を最短で消すために使われるのが「前任者も働きやすいと言っていましたよ」という言葉だ。この一言はコストゼロで効果が大きく、確認しようがないから反論されにくい。営業にとっては最強の安心ワードであり、真偽よりも応募者が安心するかどうかが優先される。

つまり、この言葉は事実の説明ではなく、契約を進めるための道具として使われている。

「働きやすい」と説明された職場に面談へ行った結果

実際、私自身も「働きやすい」と営業に説明された職場に面談へ行ったことがある。

しかし、現場で見たのは営業の説明とは全く違う光景だった。業務内容は曖昧で、オフィス内は不自然なほど静まり返り、成果に対するプレッシャーが強く、在宅勤務は一切不可。

さらに来客時は全員ジャケット着用という厳格なルールがあり、どう考えても“働きやすい職場”という印象からは程遠かった。営業の言葉と現場の実態が一致しない典型例だ。

このフレーズは嘘でも成立するから便利すぎる

営業が嘘をついていると言いたいわけではない。ただ、このフレーズは嘘でも成立する構造を持っている。

さらに厄介なのは、人間は第三者の口コミや意見に強く影響されやすいという心理的な性質があることだ。これは「社会的証明」と呼ばれる心理効果で、他人が良いと言っているものは、自分も良いものだと思い込みやすくなる。営業が「前任者は働きやすいと言っていました」と言うだけで、応募者は無意識に安心し、リスクを低く見積もってしまう。

前任者の本音は応募者には分からず、本当の退職理由は伏せられ、応募者は検証できず、営業は責任を問われない。つまり、真偽が問われない安全な言葉だからこそ、営業は頻繁に使う。事実かどうかよりも、応募者が安心するかどうかが優先されるため、この言葉は営業トークとして非常に都合が良いのだ。

営業の言葉はノイズとして扱うのが正しい

営業の「働きやすい」は、参考情報ではなく営業トークとして扱うべきだ。

信じるべきなのは、面談での空気や担当者の言葉の質、質問への答え方、業務内容の具体性、体制の透明度といった、自分の目と耳で確認できる情報だけである。営業の言葉は安心材料ではなくノイズとして扱うのが正しい。営業を疑うのは自分を守るための健全な反応である。

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