【Q&A】派遣会社は違法にカルテルを結んで派遣料金を合わせているのでしょうか?

目次
質問
派遣会社は違法にカルテルを結んで時給を合わせているのでしょうか?
主要な大手派遣会社に複数登録していますが、どの会社も掲載されてい時給が同じなので明らかに違和感があります。裏で時給を合わせているとしか思えません。
複数社で同じ時給なのは、どう考えても不自然なんですが。
回答
2026年6月2日にYahoo!ニュースや複数の大手新聞社サイトなどに掲載された記事によると、人材派遣大手5社が企業に請求する派遣料金でカルテルを結んだ疑いがあるとして、公正取引委員会が独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで立ち入り検査を行ったと報じた。
対象はパーソルテンプスタッフ、スタッフサービス、リクルートスタッフィング、アデコ、マンパワーグループの5社。
いずれも東京都内に本社を置き、売上高は業界トップクラス。関係者によれば、5社の幹部は2022年11月ごろに集まり、職種「一般事務」の派遣料金を2023年4月以降に1時間あたり100円弱そろって引き上げる協議をした疑いがある。
派遣料金は通常非公開で、各社が地域や職種ごとに個別交渉する仕組みだが、今回は5社が同額を同時に上げたとされ、全国規模で価格調整が行われた可能性があると報じられた。
派遣料金が非公開であるにもかかわらず、5社が同じタイミングで同額を値上げしていたという時点で、市場競争は機能していない。普通なら、A社が値上げすればB社は顧客を奪うために据え置くか条件を変える。
しかし、今回の構図は業界トップクラスの5社が足並みをそろえて全国で料金を引き上げていた疑い。競争すべき企業が価格を申し合わせれば、それは独禁法で最も嫌われる行為だ。「偶然5社が同じ額を同じタイミングで上げました」なんて、そんな都合のいい奇跡が業界全体で起きるわけがない。これがもし偶然なら、宝くじの1等が5週連続で当たるレベルの奇跡である。
さらに、対象は一般事務という最大級のボリュームゾーン。派遣会社は派遣料金からマージンを差し引いて時給を決めるため、料金が横並びなら時給も横並びになる。求人を見て「どの派遣会社も同じ時給で気持ち悪い」と感じたあなたの感覚は正しい。
なぜバレたか
記事には書かれていないが、公取委が動く典型パターンは決まっている。
内部告発、取引先からの相談、市場データの異常。この3つのどれか、あるいは全部だ。
特に今回は“5社が同額を同時に上げた”という不自然な動きが全国規模で観測されている。派遣料金は非公開でも、企業側が「どこに頼んでも同じ値段なんだけど?」と気づけば、公取委に相談が入る。内部の誰かが「さすがにこれはヤバい」と思ってリークした可能性も高い。カルテルは裏切り合戦なので、内部告発は珍しくない。
なぜバレないと思ったのか
理由は単純で、派遣料金が非公開だからだ。各社が個別に交渉し、金額は外に出ない。
だから「横並びにしてもバレない」と単純に思ったのだろう。さらに、派遣業界は職種、地域、契約形態が複雑で、外からは価格の比較がしにくい。そこに甘えた結果がこれだ。
だが、全国規模で同じ幅の値上げをやれば、どれだけ隠しても市場データに歪みが出る。企業側も利用者側も「なんか全部同じだな」と気づく。内部の誰かが耐えられなくなる。結局、隠し通せると思ったのは料金が非公開だからという慢心でしかない。
処分予測と派遣会社の今後
カルテルが事実なら課徴金は相当額になるだろう。独禁法違反は“やったもん勝ち”では済まない。
しかも、今回は派遣業界トップ5社に立ち入り検査が入っている。これは派遣業界全体の信用が吹き飛ぶレベルの事件である。
そして今回の件は、この5社だけの問題ではない。派遣業界全体が「非公開の料金」「複雑な契約」「外から見えない仕組み」に好き勝手やり続けてきた結果である。透明性ゼロの料金体系に胡座をかき、労働者の時給を握り、企業への請求額を握り、業界の空気まで握っているつもりだったのだろうが、実際には横並びに逃げ、マージンの透明化を嫌がり、都合の悪い部分は全部ブラックボックスに押し込む。
そんな業界が「健全な市場です」と言い張るのは、もはや笑い話である。今回のカルテル疑惑は、派遣業界が長年抱えてきた透明性の欠如が一気に露呈した象徴的な事件である。もし処分が下れば、派遣業界全体の信頼も吹き飛ぶだろう。だが正直なところ、信頼が吹き飛ぶほどの信用が最初からあったのかどうかも怪しい。
今回の件は、派遣業界が自分たちの傲慢さで自爆しただけである。皮肉としては完璧すぎる。
0