派遣会社は利益率1.2%の薄利多売ビジネス!! 回転寿司より回転命な派遣ビジネスの仕組み

派遣会社というのはピンハネ企業とよく言われる。

派遣労働者の給料の3割~4割程度を派遣会社の取り分となるのが一般的だが、丸々その金額が派遣会社の利益になっているかというと実はそうでもない。むしろ、派遣会社の平均的な利益率はたったの1.2%しかない(会社四季報 業界地図2020による)。


1日1万円の派遣料金だとしたら、派遣会社の利益は120円…

2020年現在、専門職を中心として派遣の単価は上昇傾向にあり、実際は「もっと貰っているよ!」という人が多いと思うが、ここでは話を単純にするため、派遣会社が受け取る金額として1日あたり1万円の派遣社員がいたとする。

派遣社員本人が受け取る金額(時給に相当)が6割の6千円として、残り4千円は派遣会社の取り分としよう。リーマンショック以前の派遣会社は大手でも社会保険に入っていなかったり、かなりいい加減だった。しかし、今現在のまともな派遣会社の派遣会社の場合は、正社員と同じように厚生年金、保険組合などの健康保険、雇用保険、労災保険に入っている。

毎月ちゃんと給与明細を見ている人はわかると思うが、それらは本人が支払うものもあれば、厚生年金や雇用保険、労災保険は雇用元の会社、つまり派遣会社が払うのだ。半年勤めれば10日分の有給休暇の権利が発生するが、その金額は派遣会社が負担するので本人からピンハネした分を使うことになる。それ以外にも、もちろん派遣会社自体の経費も必要だ。

有給が発生しない短期の仕事の方が派遣会社は儲かる(?)

何らかのトラブルで有給を使わなかったり、うまいこと社会保険加入を逃れたりすると派遣会社の利益率は上がる。そのため、以前は多かったグレーな派遣会社は積極的に社会保険に加入させなかったり、有給が発生しないような短期の仕事ばっかり紹介して、回転寿司のごとく派遣社員を回転させていたのだろう。

ちなみに、回転寿司はいかにも利益率が低そうだが、とある大手回転寿司チェーンの利益率は5%程度あり、派遣会社よりはだいぶ利益率が高い。

営業マン1人あたり100人担当するのは当たり前

派遣社員を1人働かせて1日あたり100円~200円くらいしか派遣会社の利益にならないのに、どうして派遣会社の営業マンたちは生活が成り立つのかというと、彼ら彼女らは1人あたり100人前後担当しているのが普通だからである。やり取りの中で電話やメール連絡が遅かったり、忘れられたり、いい加減に思える情報伝達があったりするのは、常に100人程度を相手にしているからなのである。

これは都市部の大手派遣会社の場合だが、派遣会社というのは薄利多売のビジネスなのだ。大量に人を派遣して、適当な所で回転寿司のように派遣社員を回転させるの派遣ビジネスの正体。そこには1人1人の細かなケアや、キャリアのことを考えるといったことは現実的に不可能なのだ。

派遣会社の営業マンなどの従業員にしても、それほど給料が良いわけでもないし、他のコラムでも触れているが、ハーバードや東大など一流大学を卒業したエリートが就いていることはまずないのである。

派遣会社とのやりとりで細かいことに悩むのは意味がない

派遣で働くと派遣会社とのやりとりというのが発生する。

実際に働く本人にとっては大事なことなのに、相談しても心無い対応をされたり、そんなことはどこの派遣会社でも当たり前に起こる。しかし、今回紹介したような派遣会社がそもそも回転寿司よりもずっと利益率が低い、超薄利多売で成り立っているビジネスであると知っておくと、無駄に派遣会社に期待することもなく、ある意味、悩みが軽くなる…かもしれない。

とは言っても、そんな利益率の低いビジネスが世の中に必要なのかも考えなくてはならないだろう。人材派遣とは働く人というよりも、派遣会社のために存在しているビジネスに他ならないように思えるからである。